Welcome to New City. Think Society for Lifegenic.
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制限時間は72時間、パブリックスペースをクラフトせよ!
〈数日限りのDIY祭典〉は、長いアーバニズムを呼び起こす

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what is think society?

ついこの間までは変わらないはずだったルールも、つまらない定型文も蹴飛ばして。大胆不敵に、自分が見つけたやり方で社会のあり方を変えようと動く。信じた方向に身体を動かすことは、少しの向かい風じゃ揺らがない「自分らしさ」になる 。いまの生活からどこまでも続いていく『Lifegenic』を手にする秘訣は、きっとそこにあるはずだ。
 アイテムは、テクノロジー、等身大のアイデア、飾らない信念、マイペース。都市に熟していくソーシャル・グッド・ムードを特集。

「たった72時間でパブリックスペースは変えられる」と証明し、世界から注目を浴びた「72HUA」。だが、彼らの狙いは、“たった数日の奇跡”からはじまる〈長期的なアーバニズム〉にあるという。世界各地で仕掛けた“72時間の祭典”とは、現地市民の生き方を、そして都市の未来を変えていく“起爆剤”だ。

パブリックスペースに奇跡を起こす D.I.Y.プロ集団の“狙い”

The Gate | Team Trans4more
Image by 72 Hour Urban Action

お揃いのオーバーオールに身を包み、みんなでゴールを目指す。まるで“学園祭”のような一体感——。イスラエル発祥の72HUAこと「72 Hour Urban Action(72時間、都市のアクション)」。それは、世界各国から集まった10人10チーム(規模によって変動あり)が、街のパブリックスペースを舞台に、制限時間の72時間でクリエイティビティを競い合う祭典だ。

「パブリックスペースの改善は、お金と時間のかかる困難なもの、という概念を覆したかった」。そう語るのは、72HUAの共同ディレクター、カレム・アルブレヒトとギリー・カジェフスキー。「適切な人材が適切な場所に集まらないと、起こる奇跡も起こらない。しかし、その環境さえ整えば、たったの72時間で奇跡は起こせるのではないか…」。彼らはそんな期待から72HUAをはじめたという。より良いものを創るには「トライ&エラー」の繰り返しが不可欠だ。にもかかわらず、国や行政の対応は最初の「トライ」までが非常に遅い。72HUAが覆したのは、まさにこの部分だった。

以前、HEAPSで取り上げてから3年。72HUAは一回目の開催から8年が経つ。前回はメールでの取材だったが、今回は二人揃ってスカイプにて取材に応じてくれた。現在、地中海のマルタ島にいるという二人と1時間にわたって会話して、見えてきたのは〈72HUAの狙い〉。まず、72HUAの目的は「72時間でパブリックスペースに奇跡を起こせる」と証明すること。そして狙いは、その祭典を起爆剤として、市民たちが自発的に行動を起こし「パブリックスペースの持続可能な長期的改善」になっていくことだという。

Staff at Take Off Event
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action 一番左がギリー、その隣がカレム。

戦術的な都市計画、タクティカル・アーバニズム?

近年、日本でも注目を集める「タクティカル・アーバニズム (Tactical Urbanism)」。タクティカル・アーバニズムとは、直訳すると戦術的な都市計画。どのへんが「戦術的」かというと、長期的変化のために、低予算の短期的プロジェクト(Short-term Action for Long-term Change)を実施する点なのだという。彼らが用いるのもこの手法だ。

「まずは、短期間でできるところまで形にしてみる」。そうやって「見える化」することで、作り手だけでなく、最初こそ消極的であった住民たちも「奇跡」を信じられるようになる。創ってみることで、何が機能して何が機能しないかなど、新たな課題や、現地の市民のニーズがより明確になることにも繋がる。

タクティカル・アーバニズムにおいて「行動を起こすこと」とともに、最も困難かつ重要なのは「現地に住む人たちが本当に必要とするものを理解する」こと。72HUAでのアクションでも「現地に住む人たちへの聴取とリサーチ」が難関なのだが、ここを詰めることはプロジェクト成功の鍵となる。馴染みのない土地で、72時間以内に聴取とリサーチもやるというのはさすがに現実的ではないため、この部分は事前にカレムやギリーが現地のパートナーと提携しておこなっているそう。集めた情報は参加者に平等に共有され、必要に応じて、現地の人々と直接コミュニケーションがとれる機会も提供している。また、「各チームに必ず一人は現地の人を入れるようにしている」という点からも、現地のニーズをくみ取ることへの徹底ぶりが伺える。72HUAは、決して作り手たちのエゴによる創作コンテストではなく、あくまでも「その街に住む人々のニーズを汲み取り、問題点を改善することが最優先」なのだ。

Ghost Team | Planning
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action

街の改善に「クラウドファンディングはやらない」

最初の開催は2010年。イスラエルのバトヤムだった。以降、イタリア、トルコ、ドイツ、デンマーク、ロシア、そして現在はマルタ島、と世界各国で現地ごとのプロジェクトをおこなってきた。
 特に、総勢100名以上が参加したドイツ南西部の都市シュトゥットガルトでのコンテストの功績は大きい。コンテストをきっかけに、その地に住む老若男女が「みんなでたのしめるパブリックアート」を求めていることがわかり、現地のアート団体を中心に「いかにして街にパブリックアートを増やしていくか」という、より大きな課題に向けた本格的な5年計画のプログラムが始動。これを機に72HUAの取り組みは「これからのアーバニズムの模範」と評されたと同時に、72HUAが考える「パブリックスペースのあり方」にも注目が集まることとなった。

その一つが、彼らの資金調達方法だ。たとえば、上述のドイツのコンテストでは、各チームに、宿泊施設とオレンジのユニフォーム、機材を運ぶトラックなど必須ツールにくわえ、必要材料を調達するためにそれぞれ約30万円の予算があたえられた。また、優勝チームには賞金約46万円が授与された。こういった必要経費をどのように集めているのか。クラウドファンディングも一つの手かとたずねると、彼らは「クラウドファンディングはやらない」と答えた。

「基本的には、現地の自治体やNPO団体と協働して集めています。クラウドファンディングはやりません。というのも、パブリックスペースを改善する金銭的責任は、そこに住む市民から税金を集めている以上、自治体と協力するのが都市計画の理想の姿だと考えているからです」。

DZO Project Team | Working On Site
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action
DZO Project Team | Working On Site
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action

長期的な公共スペースの改善は、個人や企業からの「プライベート・マネー」ではなく、市民が納める税金や地域金融機関の融資など「できるだけパブリック・マネーでまかなおう」というのが、72HUAの考えだ。その背景には、世界各国でパブリックスペースの民営化が進んでいることがある。民営化の理由は複数あるが、大きいものでは、公共スペースを維持するための予算削減だ。市や行政に維持するお金がないなら個人や民間企業が所有して(民営化して)改善していきますよ、という動きが強まっている。

実際、市や行政にとっても、公共スペースがいまより改善されれば、治安が良くなったり、投資家が興味をもったりと好都合なことは多く、それも民営化を加速させる要因になっている。一見すると、民営化は、市民にとっても行政にとっても最良の解決策にも見えるのだが、「そこに落とし穴がある」のだと二人は言う。

「市民主導」だが、ゲリラとは似て非なり。ポップアップではダメな理由

Biennale Tour on Orientation Day
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action

そもそも、パブリックスペースの改善は無償ではない。改善するということは誰かがお金を出すということ。いずれは、金銭的な貢献をした人、つまり、所有者が権力や決定権を持つこととなり、お金を持っている人がデザインする社会になりかねない。たとえば、有料化されたり、そのスペースを市民が自由に使える時間が限定されたり。はたまた、不動産業者や大手投資機関に「再開発」の名のもとに利用されて、フードトラックやブースが並ぶ、ありがちな青空マーケットなどのイベントスペースに俗化したり。結局は周辺家賃の高騰に繋がることもある。そうなると「もうその場所は、市民の“誰も”に開かれた場所ではなくなります。それは、パブリックスペースとしての価値を失ってしまう*ということです」。彼らがいうパブリックスペースとしての価値とは「その地域に住むすべての市民に平等に、無償で開かれた場所であること」。現地の自治体や公共機関と協働し、「パブリック」の部分を担保しながら、市民の力を最大限に活かすスタイルを貫くのは、その価値を守るためだ。*「オキュパイ・ウォール・ストリート」のように、民営化されたパブリックスペースが市民に平等かつ無償で開かれ、結果的に市民運動をサポートしたケースもある。

READY, STEADY, STAY! | team BEER @ 6PM
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action
FIRE ISLAND | team AMONIAC
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action

「市民主導」という点では、一種の賭けのようにゲリラ的にアクションを起こすものとも似ているが、現地の市民だけでなく、自治体や公共機関も巻き込み、適度な舵を取らせ、法的な許可をとっておこなう点は似て非なり。もちろん、勢いで出撃する“ゲリラ・アーバニズム” が効果的な場合もあるが、長期的な改善を考えると、都市プランナーや建築家を含めた「官民協働は必須」だと語る。

「パブリック」の改善に参加し、小さいながらも確かな変化を起こす成功体験をすることで、「官」と「民」の双方に「ちゃんと人が生きていけるより良いコミュニティを足元から創ろう」という当事者としての責任感も醸成される。

この当事者としての責任感の醸成は、72時間で起した奇跡を長期的変革に繋げていくのに欠かせない、本質的なものでもある。一時的なポップアップであれば、勢いと好奇心だけでなんとかなるかもしれないが、最終的なゴールが持続可能な長期的変革であるタクティカル・アーバニズムでは、当事者意識を持たないとそうもいかない。街のパブリックスペースについて考えることは、政治と似ている。「そのスペースは誰のものなのか」。社会の一員として、その街で自分がどう生きていきたいのか、どんな街で生きていきたいのか。それが「自分たちは街をどう変えていくか」に通ずるのだ。

Interview with Kerem Halbrecht and Gilly Karjevsky / 72 Hour Urban Action

LOST IN TRANSITION | team SCREW CREW
Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urban Action

Cover photo : ARCHITECTS ANONYMOUS Team, Photo by Mor Arkadir, Courtesy of 72 Hour Urabn Action
Text by Chiyo Yamauchi(HEAPS Magazine)

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