Welcome to New City. Think Society for Lifegenic.

「自分らしく生きる」ってなに?
自分にも社会にも“いい”を
探す世代の、異業種談話会
—LEXUS × HEAPS

Sponsored by LEXUS

「自分らしい生き方」— 刻一刻と流れていく生活のなかで、それは大それた人間の表題だ。流動的で正解のない「自分らしい生活」「自分らしく働くこと」「自分らしく社会と向きあう」。これらひっくるめて、自分らしい生き方を〈Lifegenic(ライフジェニック)〉と呼び、難題なテーマに切り込みを入れてみようと日本の各業界で自分らしさを拓く16人が集まった。そしてもう一人、“自分に一番心地いい”、サステナブルな方法で染め物をするアーティスト、カラ・マリエ・ピアッザ(Cara Marie Piazza)がニューヨークから来日。自分らしい生きかた・社会とのつき合いかたって、何だろう?

社会にいいもの自分にいいもの。“自分らしい社会貢献”

「明日のイベントでは、どれを着ようかな…。うーん、これがいいかも」。11月30日、東京にて。数日前、ニューヨークのブルックリンからやって来た染め物アーティスト、カラ・マリエ・ピアッザは、土色のシャツを手に取った。無骨な力強さのなかに温かみを感じられるような色。このシャツは彼女が、アカネの根に牡丹、バラの花を使って手染めした自作の洋服だ。

イベントは、その翌日12月1日におこなわれたLEXUS とHEAPS共催の「Lifegenic Table 〜 僕らの想いが社会と暮らしを前進させる」。カラをゲストに迎えつつ、さまざまな業界の経営者や社会活動家、フリーランサーたちが集合。多様性があらゆるところで会話に持ち出される昨今では、“他人についての許容と理解”が重視されるなかで、それにはまずは「自分らしさ」についてをしっかり話すことが大事だと思うし、意外と自分らしさについてきちんと話すのも簡単じゃないよなあと、“自分らしい”をあらためてテーマにした。自分らしさ、それから自分らしい生活、いい社会と自分にいいバランスって? 自分らしさが集まるこれからの都市、などなどテーマを細切りに話しを広げ、さまざまな名言が飛び出す“心地いい呼吸をした”イベントとなったが、その様子を語る前に、まずカラについていま一度思い出したい。

ニューヨークから参加してくれた染め物アーティスト、カラ・マリエ・ピアッザ。

カラは、ブルックリンを拠点とする染め物アーティスト。そのアーティスト活動において彼女らしさは、染料は草花などすべて天然染料の「ナチュラル・ダイ」で、使う花は地元の花屋から回収した売れ残りの廃棄花、という点。彼女は、自分がやりたい“ものづくり”のなかで、葛藤を感じていた一人だった。以前の弊誌インタビューでは、こう話していた。「作りたいモノを作れば作るほど、環境破壊に加担してしまうことにジレンマを感じていた」。染め物に使う合成化学染料は、水の汚染など環境破壊を引き起こす。「自分のやりたいことが環境破壊に繋がると知ってしまった以上、知らないふりをするのは心が痛い。じゃあ、自分にできることって…化学染料を使わないで染めればいいじゃん!」。自然界の草木を使って手染めするという昔から継承される方法をもちいて、都市で廃棄されるはずだったゴミ箱行きの花をかき集め、シャツやスカート、ジーンズ、ジャケット、ドレス、作業着、ハンカチ、敷物などを一枚一枚染めあげる。

彼女の話す「なにも犠牲にせず、なにも妥協せず社会に貢献しているから」という意味は、自分らしさも犠牲にしない、ということだ。そこが今回、〈Lifegenic〉を語る場にカラがぴたりとはまったのだと思う。
 ものづくりがしたい。染め物がしたい。それが自分がやりたいことで、自分らしくいられること。でも、ものづくりを通して加担してしまう環境破壊を無視できないのも、これもまた彼女自身の性だから、無視できない。そこから追求した答えが、サステナブルで環境にやさしいナチュラル・ダイだ。「環境にいいことをしなければ」「社会貢献をしなければ」と自分らしさを置いてけぼりにして義務的におこなう“社会へのいいこと”ではなく、自分の欲求や信念を突きつめた結果の“社会へのいいこと”。これって、意外と難しい。

「100%サステナブルに生きられないからって、10%の“自分にできること”を諦めないで」

当日、土色の手染めシャツをまとったカラのプレゼンテーションでイベントは開幕。古代から続く天然染色法の歴史から話ははじまり、自分の手染め作品をスライドで流しながらナチュラル・ダイの奥義へ。絞り染めからハンドスポンジ(染料の入った液体にスポンジを浸けて衣服に色をつける方法)やハンドペイント(手塗り)、バンドル・ダイ(花をくるくると布で巻いて糸で縛り染色する方法)、ピグメント・ボミング(粉の染料を投げつけて染色する方法)など、まるで画家のような創作過程を教えてくれた。
 草花だけでなく、土や無毒性の金属のサビを使った染色も彼女の領域。制作のかたわらに染め物教室も開き、ナチュラル・ダイの技術を人々に教えているのだとか(次回の来日では、ワークショップを必ずやろうと固く約束)。「あとね、最近はシェフとも協力しあっている。シェフからレストランで出た廃棄食料をもらって、それを染料にする。どんな産業から出たゴミも、ちょっと視点を変えるだけで、何か価値あるプロダクトになりえるのかもね」。

天然染料が布地に染み出るように、自分らしさがにじむカラのトーク。 「自分の好きなように、自分らしく生きるために大切なことは?」「社会を前進させるために必要なことって?」というLifegenicのメインテーマに差し掛かり、自身の考えを彼女はこう話した。

「社会を前進させるのに必要なこと。それは〈スローダウン〉することだと思う。“早く安く”に取り憑かれたいまのファッション業界がある一方で、自分の仕事(ナチュラル・ダイ)は、ゆっくりと生きる機会をあたえてくれるから」。スローダウンは、“つくる”、“働く”だけに当てはまるものではない。彼女は、自分のプロダクトを通して消費者にも“スローダウン”してもらうことを願っている。「私が染めあげた一着を、一生かけて着てくれるお客さんがいてくれたらうれしい。さらに、その子どもの代にまで着てもらえたら、言うことなしね」

以前の取材では、こう話していた。「たのしくないと続けられないし、サステナブルじゃない」。生まれも育ちもマンハッタン、都会っ子の自分は都会での暮らしが性にあう、でもナチュラル・ダイをやるなら田舎で暮らした方がいい。でも、「自分が生活する都市環境のなかで、いかに自分ができる10パーセントを実践していくか。森林のなかで100パーセントサステナブルに生きることは現実的に不可能だから」。100パーセントのサステナブルを実現できないからって、10パーセントの“自分にできること”を諦めないで。自分らしく生活すること、その中で自分の好きな社会にいいことをしていく。そのパーセンテージも自分の采配によるものでしかないし、それもまた自分らしい生活を支える根底の自分らしさだ、と。

「自分らしさは自分ではわからない」

「仕事と私」「あなたと私」「社会貢献と私」。カラのプレゼンのあとは、この3つのキーワードが書かれた3枚のカードを手引きに〈自分らしさ〉を探すグループディスカッションをおこなった。4つのテーブルに座る16人は、業界も職種も勤務形態も雑多な社会人たち。フリーランスの編集者/ライターに、食や農業に携わる起業家、イベントのタイトルにも冠された「Lifegenic Table」では、どんな自分らしさが飛び出したのだろう。

「仕事のオン/オフはない。それが無理な人は無理だと思うけど、ぼくは大丈夫なタイプ。友だちと飲みに行っても、そこから取材やコラボみたいな仕事の話になるし。オフでフェスに行っても、出展しているアーティストがいたら仕事モードになる」。

HEAPSの姉妹メディアである『NEUT(ニュート)』の編集長・平山潤氏も参加し、メディア人がとくに曖昧になるオン/オフについて話す。ディスカッションはカードのトピックを飛び越え、「メイクマネーの考え方を考えたい」「サステナブルって、どれくらいの期間で考えたらいいんだろう」にも及ぶ。「(カラのように)天然素材を使うのは何年後のサステナブルに繋がっていくのか。100年後のサステナブル、1000年後、1万年後のサステナブルを実現するために、果たしてやることは同じなのか」と、ショコラティエでチョコレート専門店「MAMANO(ママノ)」代表取締役社長の江澤孝太朗氏は、独自の目線で“サステナブル”を斬る。

「オンとオフをわけるというよりかは、いかに友だちを多くつくり、まったく仕事と関係ない人とも人間としてつきあっていくなかで『この人と仕事ができるな』と思ったときだけオンになる」(長谷川賢人さん、フリーランス編集者/ライター)

「オン/オフってわからないし、サステナブルという言葉も難しい。社会貢献というのも遠い。マジョリティの人たちにとって言葉はどうでもよくて、大事なのは『どこにエクスタシーを感じるか』『なにが気持ちいいんだっけ? どこがたのしかったんだろう?』『いままで幸せだったことってなんだろう』『つい笑っちゃったときっていつだろう』」(井上拓美さん、株式会社MIKKE代表)

「自分らしさは自分ではわからない。人と接するときに、人が“自分らしさを”教えてくれるのだと思う。いろんな人とつきあうと、自分のいろんな面が見えてきて、それが総合的に自分らしさに集結していくのでは」(唐橋佑さん、Lexus International)

「私自身は、ファッション系の大学で働きながら、ウェブメディアのライターをやりつつ、デザイナー/アーティストとしての制作もしている、とやりたいことをやっている。それがすごくたのしい。高校生のときにはあるNPOで活動していたが、そのときは自分の得意な分野を全然活かせなくて。サステナブルな社会に貢献はしたいと思っていたが、あまりたのしさを感じなくて。いまは自分の得意なこととか、幸せに感じられるところを生かしながらできている。自分がたのしめることで貢献をすることが大事だと思った」(小林ななこさん、クリエイター)

「自分たちが生きているところが社会であるので、その社会が持続可能でない限り、私たちも幸せに過ごすことはできないなと思っている。でも、その社会のために社会のために、となにかをするのは持続可能ではないので、自分たちが心地いいこと、100パーセントでなくてもいいから、20パーセントやることが一番大事なんじゃないかな」(Alisa Frances Evansさん、モデル・通訳・イベント企画運営・コーディネート・プロデュース)

今日発見したのに、明日には見失うことさえある。数十年後にはまったく別の姿になっているかもしれない〈Lifegenic(ライフジェニック)〉の答え。それを追求する行為そのものが、確かに“自分らしく生きている状態”なのだろうと思う。ゴールを見据え、息を止めた数秒間の短距離ダッシュではなく、自分にとっての心地いい呼吸をしながら柔軟に走路を変えていくイメージで。完成しきることのない“自分らしさ”が無数に生息するからこそ、社会は前に進む余白を残している。

Lifegenic Table

(後列左から、敬称略) 小谷美佳(本イベント運営スタッフ)、星賀統貴(Lexus International)、南のえみ(『NEUT』編集者)、小林俊仁(株式会社 ukka代表取締役/共同創業者 )、野島優一(本イベント通訳)、和田拓也(フリーランス編集者/ライター)、井上拓美(株式会社MIKKE代表取締役社長 )、岡田弘太郎(編集者/DJ)、長谷川賢人(フリーランス編集者/ライター)、平山潤(『NEUT』編集長)、唐橋佑(Lexus International) (前列左から) 小林ななこ(テキスタイルデザイナー/アーティスト)、小森優美(株式会社HighLogic代表取締役/エシカルファッションデザイナー)、Alisa Frances Evans(モデル/通訳/イベント企画運営/コーディネート/プロデュース)、Cara Marie Piazza(染め物アーティスト)、秋田梨紗(『HEAPS』編集者)、江澤孝太朗(チョコレート専門店 MAMANO代表取締役社長/ショコラティエ)、宮本裕人(フリーランスのストーリーテラー)

Photos by Kohichi Ogasahara
Text by HEAPS
Supported by LEXUS

探そう。自分らしく生きる手がかりを。Cue for Lifegenic Supported by LEXUS 詳しくは、こちらから

PageTop