Welcome to New City. Think Society for Lifegenic.
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「高級な変り種を好む僕らは、うまくいく」

都市のカルチャーに入り込む〈ハイエンド・アーバンファーム〉Farm.OneSponsored by LEXUS

what is think society?

ついこの間までは変わらないはずだったルールも、つまらない定型文も蹴飛ばして。大胆不敵に、自分が見つけたやり方で社会のあり方を変えようと動く。信じた方向に身体を動かすことは、少しの向かい風じゃ揺らがない「自分らしさ」になる 。いまの生活からどこまでも続いていく『Lifegenic』を手にする秘訣は、きっとそこにあるはずだ。
 アイテムは、テクノロジー、等身大のアイデア、飾らない信念、マイペース。都市に熟していくソーシャル・グッド・ムードを特集。

何百万もの市民と何万ものレストランがひしめき合う大都市の“地下”で、名前も聞いたことのないような数百の“変わり種”を育てるアーバンファームがある。ハイエンドな種類を育て、顧客もまた“ハイエンド好み”にロックオン。レタスやミニトマトなど馴染みある野菜の姿はない。なかなか強気なアーバンファームだが、それゆえ「都市文化」に入り込んで成功。ハイエンド・アーバンファーム〈Farm.One(ファームワン)〉の独自路線を根掘り葉掘り、紹介しよう。

数百種のレアなハーブに食用花。大都市のニーズを見極めた大胆路線

都市の屋上農園やベランダ菜園はますます生い茂り、コミュニティガーデンではこれまで土に触れてこなかった若者たちが軍手姿で汗を流す。都市と農業の距離がずんと近づき、“いい都市”には必ずアーバンファームがある今日だ。
 近年ぐんぐん根を伸ばす都市農業・アーバンファーミングのなかでも未来の都市型農業と呼ばれ注目されているのが「ヴァーティカルファーミング(垂直農法)」。土地が限られた大都市の小さなスペースで、農園を横ではなく“縦”にし、より多くの野菜を育てる手法だ。土・太陽光は不要、水と栄養剤・LEDライトで育てる水耕栽培のため、屋内でもOK。大都市の高層ビル内や駐車場の貨物用コンテナなどでも導入され、近未来的なLEDライトを発しながら市民の食料を育てている。

いまでこそ、その“未来の都市型農業”も定着しつつあるが、「ヴァーティカルファーミングが初期段階でみんな探り探りだったころ、誰も栽培していないような珍しい種をたくさん育てようと踏み切りました」。そう話すのは、ニューヨーク・マンハッタンの地下にあるヴァーティカルファーム Farm.One(ファームワン)の創設者、ロブ・ライン氏。

続々と増えるアーバンファームだが、いまだ課題となるのはビジネスとして運営していくこと。いくら高い技術を持っていても売れなければ存続できない。逆に、空きスペースを利用したアナログな土壌栽培の農場でも、近所のコミュニティにうまく機能すればうまくいく。そもそも健全な運営に不安が残るヴァーティカルファーミングにおいて、さらにその敷居が高かった頃にスタートを切ったロブは、ターゲットを大胆に“ハイエンド好みのみ”に絞った。ハイエンドなアーバンファームの作物の売り手、つまりファームのパートナーに選んだのは、ニューヨークのレストランシェフたち。数百種の珍しいハーブや食用花に特化して育てようと思い切ったアーバンファーマーは、変わり種を好むに違いない顧客をターゲットにした。「農業経験はなかったのですが、食や食材への興味があって。みんなが育てていないような“変わり種”を育てたい、と思ったのです

アーバンファーマー歴は2年。食の時代がヘルシー、ナチュラル、オーガニックへと流れる2015年に、食やアーバンファーミングに目覚めたという。「みんながメインストリームの作物を育てるなら、ぼくは“変わり種”を育てたいと思って」。思い立ってからの行動は早かった。タイとロサンゼルスで料理学校に通った後、ニューヨークへ。美食の街と呼ばれレストランシーンが確立しているニューヨークでは、「シェフたちは珍しいハーブや食用花を自分たちで取り寄せなければならない」。つまりこの都市には「珍しい種が売れる“レストランシーン”があった」。ハイエンド・アーバンファームの構想から1年足らずの2016年、ファームワンを創設。以来、ニューヨークという都市で機能する独自のファームビジネスを拡大しながら展開している。マンハッタンの地下で人知れず生い茂る“ハイエンドなアーバンファーム”をHEAPSは訪問してみた。

独自のシステムで一年中変わり種を栽培。16時間LEDが灯る“365日いい天気”のハイテク地下農園

「これ、食べてみてください」。ロブから、ピンク色の小さな花が差しだされる。言われるがままに口に入れ噛んでみると、ほのかに酸味がする。「この葉っぱは、プルートバジル」。普段口にするバジルより風味が濃い。「これはリコリス(甘草)のような味がするでしょう」。薬草のような独特の味がする。
 次々と手の平に乗せられる聞き慣れない名のハーブや花は、数秒前にロブが手で摘んだファームワンのプラントたちだ。「ここには常に100から200の珍しい種があります。ここまで幅広い変わり種を一気に栽培するアーバンファームは、いままでありませんでした」
 高級レストランが軒を連ねるトライベッカ地区、ミシュラン2つ星レストランの地下にファームワンはある。ルーフトップでもなく地上のコミュニティガーデンでもなく“地下”。その理由は、「ニューヨークの気候は非常に極端です。冬は凍えますし。地下なら天候に左右されず、温度など環境をコントロールでき、(栽培や収穫が)予測可能。屋上じゃそれは無理ですもんね」

「それから、都市には、“何も起こっていないがらんどうの地下スペース”が何千もあります」

ファームワンが導入する栽培方法は、水耕栽培だ。土を使用せず、水と栄養剤でプラントを育てる。地下には当然太陽光は入ってこないので、LEDライトを16時間当てておく。プラントたちの睡眠時間は8時間。室温は約24度。「いつでも“夏の最高に心地いい日”という感じです」。
 一年中最適な環境で育てられるのも、ファームワンが導入するテクノロジーのおかげだ。種まきから収穫までを管理する栽培システムを開発し、プラントごとの“栽培レシピ”をカスタマイズ。7人ほどのスタッフはシステムに従ってハイテクファームを管理する。ちなみに、“てんとう虫”もスタッフの一人(匹)。ファームワンは無農薬のため、こうして害虫駆除用の虫を意図的に持ちこんでいるのだ。

元気にロブ氏の手をはうてんとう虫が。

「最初は赤ジソなど10種のプラントからはじめた」が、その種は増えに増え、これまで栽培してきた“変わり種”は500種。珍しいハーブのプルートバジルにパープルラッフルバジル、伊トスカーナ料理に多用されるハーブのネピテッラ、紫の食用花オキザリス、わさびのように辛いわさびルッコラ、穂状の美しい花を咲かせるハーブのアニスヒソップ、フランス料理に多用されるハーブのレッドソレル、香辛料として使用されるオランダセンニチ、など。米国内からヨーロッパ、アジアまで65の業者から種を輸入し、毎週新しい種を蒔く。「独自リサーチや人づてに珍しい種を発見しています。またシェフたちから『こんな葉や花がほしい』とリクエストもありますね」

「バジル、1キロ1万円」都市の“偏差値の高い食文化”に応じるファームを

取材中、収穫したばかりのプルートバジルの容器が目に入った。いくらか尋ねると「1.3キロで126ドル(約1万4,000円)はしますかね」。通常のバジルがその4分の1の価格だというから、ファームワンの育てる葉や花は、かなりお高いことがわかる。

「そもそもヴァーティカルファーミングをするのにはコストがかかります。利益を生むためには、高い価値で売れるものを育てる必要があるのです」。高い費用をかけて栽培システムを開発し、テクノロジーを駆使して維持する。くわえて都市でファームを管理するには、高い人件費に高い家賃、LEDライトの電気代もかさむ。だから「さまざまな種類のプラントを、生育培地、栄養剤、ライト、温度などを調整し試してみます。しかし、それでも育てるのが難しいもの、栽培しても売れないものは見切りをつけないといけない。決断力も必要です」。
 アーバンファームを都市のなかできちんとビジネスとして成り立たせたファームワンの術。日本でもアーバンファームは増えているが、「多くは、安価な作物を栽培してますよね。安い作物で儲けを出すには、とても効率的に栽培しなければいけないのです」。アーバンファームのシステムに同じコストをかけるなら、珍しく高く売れるプラントを栽培した方が当然お金になる。もちろん、そのプラントを“売れる市場”が必須なわけだが。

ファームワンにとって、“売れる市場”は目と鼻の先。ハイエンドなレストランやこだわりピザ屋、メキシカンレストラン。高級店やさまざまな国の料理を提供するエスニックレストランがずらり。食の偏差値が高い都市ならではの食事どころがファームワンの顧客だ。「シェフやレストランのキッチンにサンプルをもって行きます。彼らが使いたい葉や花を聞いたり、ときにはお店のメニューに合わせてハーブや花をマッチングしてあげることも。反対にシェフたちがファームワンを訪問して、知らない葉や花に出会ったりもします」。高いハーブでも、これぞ求めていたものだ! と買ってくれる顧客がいる。都市の食文化やニーズに絞ったファームワンのビジネスは、清々しいほどに合理的で現実的だ。

「その日のうちの摘みたてを“自転車”で届ける」都市文化に溶け込む

「大都市にいること、それはつまり顧客にとても近い位置にいることです」。ファームワンの売りは「数時間前に手摘みされた葉や花が届く」。注文を受けたらプラントをもぎり、容器に詰め、届け先の店まで配達する。移動手段は、地下鉄か自転車。都市の交通文化をうまく利用したデリバリー方法だ。

イタリアの高級食材が揃うグルメマーケット「イータリー」内にあるレストラン入り口には、ファームワンの栽培システムが導入されたミニファームがある。ガラスケースのなかでは、プルートバジル、ブッシュバジル、ネピテッラ、マジョラムなどの変わり種がすくすく育つ。食べごろになったらシェフ自らが収穫し、料理やカクテルに使う。

「11月にはセージとタイムも追加するんです」とシェフのトムもたのしみにする。

「将来的にはLEDの電気代も下がります。テクノロジーのおかげで、ファームワンのようにシステムがあれば、農業未経験者だって管理できます」。テクノロジーが発達し普及すれば、コストも下がる。コストが下がれば、ハイテク農園も増える。テクノロジーの導入で、都市の文化や市民の生活に自然とファームが入り込む。「市民の食事どころ、市民の家に近いアーバンファームが、たくさんできるといいですね」。

「ありきたりな野菜は育てたくない、風変わりな葉や花を育てたい」という純粋な種は、都市の食文化や料理人たち、インフラを栄養剤にして〈ハイエンド・アーバンファーム〉という新種の都市カルチャーを花咲せたのだ。

Photos by Kohei Kawashima
Text by Risa Akita (HEAPS Magazine)

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